鳥取県内では、2014~2015年に実施された「鳥取藝住祭(以下、藝住祭)」がきっかけとなり、各地でさまざまな団体が、独自の目標やテーマに基づきアーティスト・イン・レジデンス事業等を展開してきました。藝住祭終了を受けて活動が休止する事例や団体自体が消滅した事例も存在する一方、その後も形を変えながら活動を継続する動きや、そうした周囲に影響を受け新規に活動をスタートさせる新たな団体などもあり、それぞれに試行錯誤を続けています。
私たち鳥取藝住実行委員会は、藝住祭が無くなった後においても、各団体のネットワークを繋ぐ目的で2016年に設立。広報的な役割を担い、またアーカイブ能力を相互に高めていけるようにとウェブサイト「+○++○(トット)」を2017年に立ち上げました。私たちは「+○++○(トット)」の運営を軸に、各団体との対話を重ね、それぞれの活動を様々な立場の人の言葉で記録し蓄積してきました。
そうしたこの5年間の動きの中で見えてきたのは、もともと人口最小県であり社会的資源が乏しいと言われるこの鳥取において、芸術文化に携わる多くの団体や個人が相互に知見を共有しながら、創造的な活動を持続的に運営できる仕組み作りが必要だということ。これまでの関係性や経験を頼りに、鳥取ならではのクリエイティブ・プラットフォームについて話し合い考え、実践しながら構築を試みていきたいと思います。
この取り組みにおいてまずは、2022年の9月から2023年6月にかけて、北海道札幌市でアーティスト・イン・レジデンス拠点「さっぽろ天神山アートスタジオ」を運営する小田井真美さんに、県内の10の団体へのヒアリングを行っていただきました。ヒアリングには上海出身で東京を拠点とするアーティストのボート・チャン(張 小船 Boat ZHANG)さん、北栄町在住のキュレーターである岡田有美子さんにも加わっていただき、多角的な視点から、鳥取県内のアーティストを迎える個々の「環境・状況」や、個別の独立した活動が紐づく地域としての鳥取とはどんな場所なのかを捉えることを目的としました。
小田井真美さんが個々の団体との対話から知り感じたこと、これまでの蓄積やこれからの可能性について、レポートをお寄せいただきました。県内を縦横無尽に移動する中でボート・チャンさんが捉えた鳥取の姿も一緒にご覧ください。岡田有美子さんには、より具体的に、活動を持続可能にするために必要な側面を提言いただき、その構築を今後一緒に進めていく予定です。